第2回 ワークショップ「あなたにとってシェアリングエコノミーって何?」開催報告


韓国ソウルなどで近年、貧困対策や雇⽤対策、渋滞解消など、さまざまな都市問題の解決に、シェアリングエコノミーを活⽤する取り組みが急速に進んでいます。東京・生活者ネットワークは都議会会派で唯⼀(4⽉17日現在)、都議選に向けたシェアリングエコノミーの政策化を発表しております。今回は、市⺠団体「地域経済を考える国分寺の会」が主催するワークショップを共同で企画しました。

ワークショップは、シェアリングエコノミーに関⼼心のある皆さんと⼀緒に専門家の話をうかがい、私たちが、どのように新しい経済の潮流に向き合ったらいいのか対話を通じて考え⽅方を整理するのを⽬的に実施。会場の都立多摩図書館では、会社員、⼤学生など含め、総勢25名、20代から70代まで幅広い世代の市民が参加。都議会議員の⼭内れい子も話し合いの輪に⼊りました。

 

    

この日は冒頭で、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の石山アンジュさんが 「シェアリングエコノミーでつくる公助の社会」と題し、基本的な考えをレクチャーしました。

「場所・乗り物・モノ・人・スキル・お金をインターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(貸借や売買や提供)をしていく新しい経済の動き」とし て、全世界で2025年には3350億ドルの市場規模、日本でも10兆円台の経済効果が試算されていることが説明されました。具体的に普及が進んでいるサービスの事例として、民泊やフリーマーケット、カーシェアリング、クラウドファンディング等が紹介されました。

公的分野での応用については、地域活性の起爆剤として国内の自治体が「シェアリングシティ」を宣言し、子育てや観光、スペース貸し出し等を始めたことが紹介されました。さらに、海外都市で注目のソウル市については、石山さん自身が現地を視察した模様も含めて報告。ソウル市自らが、ネット上のプラットフォームを運営して市民・企業の間を仲介したり、お金のない学生に就活のスーツを貸し出したり=写真右下=、市民が本を持ち寄って貸し合う図書館ができたりといった、シェアリングエコノミーが根付いている様子が伝えられました。

    

会場ではスマホでスライドを撮影したり、熱心にメモを取る人の姿も。質疑応答では、「ネットを使ったサービスなので、顔が見えないから信用度が落ちるかもしれない」という意見も上がったのに対して、石山さんからは、ユーザーがそのサービスを提供している人を評価する「評価経済」のシステムがあることが説明されまし た。

    

また、ある参加者は「洋服のシェア、農園を借りて作物を借りて食べることのシェアはいいと思った」としながらも、政府が「1億総活躍社会」の一環として、シェアリングエコノミーに注目している点について、「活躍させられるためではなく、自らの意思として、お互いの気づき、活性化の目的があることが大事」と、指摘する場面もありました。
この日は、昨今のワークショップで注目されている、ファシリテーショングラフィックの専門家も参加。話の流れをリアルタイムで整理して可視化し、仕上がるたびに会場内に掲示。参加者も休憩時間に張り出された模造紙をみて、流れを確認しながら、自分の考えをまとめていました。

    

もうひとつ、今回のワークショップの目玉だったのが「レゴ®シリアスプレイ®」 の導入。レゴブロックを使って、お互いの考えをカタチにし、共有しあうもので、大半の参加者が子どもの頃に自身が遊んだり、お子さんが小さい時に一緒に遊んだりして以来とあって、久々のレゴを楽しみながら、私たち生活者がシェアリングエコノミーとどのように向き合ったらいいのか、カタチにしていきました。

   

「きょう参加した理由をレゴで作ってください」のお題では、大学生が「シェアリングエコノミーのことを、一歩一歩階段を上がるように学んでいきたい」という心境を語り、周りから拍手をもらっていました。

今回のワークショップは、参加者全員がフラットな関係なのが特徴。同じテーマで も、何億とおりもの組み立てパターンがあるというだけあって、そのカタチにした理由を尋ねあうなど和気あいあいとした雰囲気で進みました。山内都議も、参加者のみなさんと懐かしそうにレゴを組み立てながら、交 流していました。

シェアリングエコノミーの普及に際しては、眠っている経済効果を引き出すメリットと同時に、参加者の間では「顔の見えない相手との取引ができるのか」というリスクや信頼に対する関⼼が強くうかがえました。そこで皆さんに「あなたにとって信頼できることは何か?」という問いを投げかけ、カタチにしてもらうことに。

こちらのグループでは「いろんな⼈や意⾒があっても、最終的にバランスが取れて成立するのが信頼。その《輪》によって信頼が成り⽴っていく」という考えを込めたそうです。

   

こちらのグループは、「違いや隔たりがあっても、つながりがあって⼀つのことを⽬指して頑張れる。それを周りが応援できる、通じ合うコミュニティーができている」といったコンセプトを表現しました。

このほか、別のグループでは「楽しそうな道と不安なところの道がある」という相半ばする気持ちを表現しながらも「自分から信頼することも必要。適度な距離をもちながらの関係や信頼があって、そこから広がっていく世界を表現した」と前向きにとらえていました。

    

グループごとの発表の後、⽯⼭さんは「信頼というキーワード一つとっても、地域の⼈が⽀え合う観点、⾏政が守ってくれるという観点など、⼈それぞれあることを感じました」と感想を述べました。山内都議は「シェアリングエコノミーは進んでいくのかもしれない。そのとき、私たちはどう考えたらいいのか。(リスク対策など)しっかりとしなければいけないことも含めて、きょうは考える第一歩にできたのではないか」と振り返りました。

参加者は帰り際、模造紙にそれぞれ気づいたことを書いたポストイットを貼っていきました。

   

参加された皆さん、ありがとうございました!東京・⽣活者ネットワークとしても、ワークショップで出てきた皆さんの考え⽅が大変参考になりました。今後シェアリングエコノミーの政策化に向けて、引き続き検討を進めていきます。