フレッシュインタビュー②篠原ゆか(昭島市議会議員)「若者が生きづらい社会を変えたい」

東京都議会議員選挙が623日にスタートします(投票日は72日)。選挙権が18歳に引き下げられてからは初めての都議選となりますが、もともと若者の投票率は高くありません。しかし、「不安定な派遣労働が続いて将来に希望を持てない」「親にお金がないので大学に進学できない」といった悩みは絶えず、政治が受け止めていかねばなりません。

 

今回は、東京・生活者ネットワーク(以下、生活者ネット)所属の若手議員の一人である篠原ゆか(昭島市議会議員、1982年生)にインタビュー。派遣社員から議員に転身し、ひきこもり対策など若者支援に取り組む篠原が、自らの悩んできた経験を含め、社会を変えていく意義を率直に語ります。(Your Voice 2020編集部)

——政治家になる前は、派遣社員として働いた経験があるそうですね。社会に対する怒りを感じたことが政治の世界に入る動機だったのですか?

そもそも、社会人になったとき、政治家になるとは思ってもみませんでした。母が昭島の生活者ネットワークの事務局で働いていたことは一つのきっかけですが、私自身は、小学6年生から南青山少女歌劇団に入ってから高校3年まで、ずっと学校と劇団の往復生活。劇団で発声を鍛えていたので、大学生のときに選挙カーのウグイスをお手伝いしたことはありましたが、当時もいまのようには政治のことを意識したわけではありませんでした。大学卒業後も、舞台女優になるのが夢をおいかけ、さまざまな劇団の活動に参加していました。

 

——いつから政治への関心を持つようになったのですか

卒業後に派遣社員で仕事をしたことが最初のきっかけでした。演劇だけでは食べていけないので、派遣社員としていろいろなお仕事をしました。携帯電話の工場で動作確認したり、銀行でお客様を勧誘したり、ほかにも通信会社系の研究所のアテンダント、幼稚園の受付といった業務を経験しました。

しかし、契約期間が切れると、次のお仕事が見つかるまで、貯金がどんどん減っていくという不安の日々の繰り返し。資格を取ってみても、その資格が次の仕事でいかせない……といった繰り返しで、このまま将来どうなるのかなという思いでした。

演劇の方もあちこちの劇団のオーディションを受けては落ち、受けては落ちるということを繰り返してしまって…。「自分はダメなんだ」と、だんだん自信をなくしていきました。いま思えば、本当に“暗黒時代”でした。

 

——選挙に出るきっかけは何だったのですか?

30歳が近づいてきて演劇をあきらめ、定職につこうと思いました。ご縁があって都心でアクセサリーショップから内定をいただきました。初めての正社員です。そしたら、そのタイミングで2011年の統一地方選で、生活者ネットで「若い世代の代表を議会に送り出そう」ということになり、私に「選挙に出てみないか」と打診がありました。

最初に声をかけられたとき、私は「とても無理です」と即答しました。母はたしかにネットの活動をしていましたが、全く思いもよらないことでした。せっかく正社員になるチャンスもあったので、とても悩みました。しかし、「あなたのように辛い経験をしてきた人こそ政治に声を届けるべきだ」と言われ、説得を受けるうちに気づいたことがありました。

 

——どんな気づきがありましたか。

“暗黒時代”の頃は、「うまくいかないのは全部自分のせいだ」と、思い込んでいましたが、よくよく考えてみれば、本人のせいだけでなく社会の仕組みに矛盾があることに気づくようになりました。

舞台女優の夢がかなえられなかったことは、たしかに私の才能が足りなかったのだと思います。しかし、演劇の道をあきらめて普通に会社員としてお仕事をしたいと思っても、一度派遣社員として働くようになった私が、正社員の仕事を見つけるのはとても難しい現実を実感しました。

その頃から不思議だったのは、日本では、大学を卒業する時、もしくは卒業から数年のうちに正社員の仕事に就いていないと難しい現実があることです。若い人には夢がいっぱいあって、とことんチャレンジする人は多い。ところが、挑戦して失敗したり、回り道をしたりした人に対し、いまの日本の企業社会は、とても冷たい。派遣社員も正社員並みに働いているのに、待遇が少なかったり、契約も期限が定められたりしています。派遣のループから抜け出そうと思っても抜け出せないのです。

派遣業界の調査データによると、半数の派遣社員が正社員の雇用を望んでいるのです。不安定なままで将来を描くことができない社会、若い人が生きづらさを感じた社会でいいのか、私だけの問題ではないのだと強く意識するようになりました。

 

——初めての選挙は最年少(29歳)で上位当選。ひきこもりの問題にも積極的に取り組まれてきたようですが、きっかけは?

ひきこもり、ニート、ひどい場合はうつ病になったりすることは、誰でも可能性があります。私自身もかつて仕事も演劇も挫折感でいっぱいだった頃は、生きづらさを感じるあまり、ひきこもりがちでした。また、私のパートナーも以前、職場になじめず、長い時期、ひきこもりになったことがあったりして、夢を持てない若い人のつらさを強く意識するようになりました。

ひきこもりの深刻なケースでは、家族も、どうしていいかわからず、外から手を差し伸べる必要があります。ところが、実態が見えづらいので、行政もよくわかっていないのが実情です。私が議会で最初に質問した頃には、「だらしないだけで働けばいいんじゃないか」と、指摘する人がいたくらい、理解されていないのです。

 

——具体的にどんな取り組みをされてきましたか

東京都は相談窓口があるのですが、市のレベルでは主体的に窓口になっていなかったので、議会質問などで提案してきました。

議員になってよかったことの一つが、全国各地への視察も含めて現場をたくさん見せていただく機会が多いことです。ひきこもりの人たちを支援している人たちの発表会に出席して当事者の声を聞かせてもらいました。京都で心の病を持つ人たちを支援する団体を視察した際には、一緒にひきこもりの人に会って話を聞いたり、ゴミ屋敷の片付けに対応する様子を拝見したり、貴重な体験でした。

ひきこもりの問題は私自身も試行錯誤で、行政を動かしきれていないこともたくさんありますが、生きづらさを感じている人たち、現場の声をしっかり届けていきたいと思います。

——都議選も近づいてきましたが、篠原さんが思う生活者ネットワークの良さや強みはどんなところでしょうか。

今回、生活者ネットからは、山内れい子(国立市・国分寺市)、小松久子(杉並区)、きくちやすえ(練馬区)、岡本京子(世田谷区)の4人が立候補予定です。

皆さんに注目していただきたいのは、生活者ネットは、長くても3期まで交代するローテーション制度を採用しています。議員の地位を特権化せずに、政治参画する市民を増やすのが目的で、都議会では生活者ネットだけです。今回の都議選でも、世田谷区では、現職の西崎光子から、新人の岡本京子に交代しますが、私自身はローテーション制度が非常にいいと思います。

もちろん、長く議員をしている人がいることで、議会の運営を安定的にできる部分もあるかもしれませんが、行政や議会の世界の考え方に染まってしまって、発想もだんだん縛られていくような気もします。

でも、市民の人たちにとっては、全く関係のないことで、自分たちと同じ目線、生活感覚に根ざした声を、政治や行政に届けてほしいものですよね。行政でおかしな問題があった時にも「これって嫌だよね?おかしいよね?」といった主婦の感覚を持っていることが大事です。まさに、議会の中にそういう「市民枠」があったほうがいいのではないでしょうか。

私は独身ですが、生活者ネットの女性議員、候補者は主婦、母親の立場の方がほとんど。自分の母親、同僚の議員、仲間たちをみていて、「子どもたちを守りたい。子どもを守るためならどんなことでもする」という強さを実感します。

 

——篠原さんの将来の目標はありますか?

私はまだ二期目なので、議員任期中は、行政の中の仕組みや情報、現場の実情をたくさん吸収し、声をあげたくてもあげられない人たちの「声なき声」を届けることに全力で取り組みたいと思います。

ローテーションの後のことは、まだ漠然とですが、京都の支援団体の活動を視察した経験が心に強く残っているので、将来は、議員生活での貴重な経験を生かしながら、生きづらさを感じている若い人たちを現場で直接支援する活動ができればいいなと思っています。

(了)